LilyAnge
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LilyAnge WORLD
Prologue

とある世界のとある時代
志半ばに散った哀れな勇者がいた。
未練のありすぎた人生。
勇者は神に強く願い
記憶を引き継ぎ現世に生まれ落ちた。
そしてそれから15年。
いつものように
実家の宿屋の手伝いをしていると、
とある噂が流れてきた。
「前世の記憶を悪用する
『堕天使』がいる」と。
転生し天使の名を与えられた少女は
各地に散らばる『堕天使』を更生すべく
旅に出る決意をする。
Chapter1 小国の崩壊

「村々とは私が交渉しておいた。更に宿の存在を広めるには、国から交渉するのが手っ取り早い。まずは小さな国と交渉してきてほしい。」
叔母のアンゼリカからそのようにお使いと見せかけ背中を押され、
アンジュは念願の旅に出ることとなった。
アンジュはアンゼリカから手渡された年季の入って黴の香りがつんと漂う
地図と睨み合い、とある大陸のとある場所へと向かった。
乙女の国と呼ばれる、小さいながら栄えた国がある。
その国の名は、ヴァージニア。女性が幸せに暮らす国であった。
国を治める女王・ニルヴァーナはとても聡明な人物であると評判である。
アンジュはヴァージニアを目指し西へ向かった。
叔母のアンゼリカの許可を得て初めての商談に、
心躍らせヴァージニアに出向いたアンジュであったが、
入国して早々にみすぼらしい男性が寄り添って住んでいる所を目撃する。
そこで、こんな事が噂されていた。
「女王ニルヴァーナは天使の皮を被った悪魔だ」
「彼女は男をこころから嫌っている」
「この国の男の事は考えてもいない」
「考えているのは自分とその周りの事だけだ」
彼女
「───ひょっとして、女王には何かあるのではないか?」
女性が幸せに暮らしているとは耳にしているが、男性の事はまったく
情報がないことから、ヴァージニアという国の存在に違和感を感じたアンジュは
偶然そこに居合わせた「恋人を探している」という青年・ジョセフと共に
小国ヴァージニアの真相に迫る事になる。
そこから二人は商談を持ちかける前に、
女王の真相に迫るべく、その協力者を求めた。
当然ながら最初はなかなか見つからなかったが
街を探索していたジョセフが尻尾を掴んだ。
ヴァージニアの守りの要「ヴィクトル聖騎士団」の団員であるという青年・イーリルと出会ったのだ。そして、様々な女王の素性が明かされる。
「噂は本当だ。」
「この国は女尊男卑制度が浸透した男性にとっては恐ろしい国。
自分も昔は女に体を売っていた。自分は今となっては騎士団の一員だが、まだ男娼はこの国に溢れている。早く何とかしないといけないが、女王は火と風の精霊を使役する事に長けている。団員の何名かも犠牲になった。そのため彼女に逆らったり、国を出ようと考える男は誰ひとりとしていない。彼女の機嫌を損ねただけで貴方達は薪となり彼女の城を暖める事になる。二人だけでは危険だ。」
イーリルはそう忠告した。が、
ひょっとしたらこの国を変えてくれるかも知れない─。
そんな予感が頭をよぎった。ひとまず悪人ではないこと、商談を持ちかけようとしていた事を念頭に入れ、ヴィクトル聖騎士団団長のヴィクトルを話し合いをすることになった。

©2016 むつ睦緒